「雪中昆虫観察と氷下微生物研究ツアー」
はじめに
北海道の冬には、白銀の世界が広がる一方で、雪と氷の下に広がるもう一つの小宇宙があります。
私たちが普段目にすることのないこの世界には、極寒の環境に適応した昆虫や微生物が、静かに、そしてたくましく生きています。そんな不思議な世界を実際に体感できるのが、「雪中昆虫観察と氷下微生物研究ツアー」です。
専門的な学びと体験が融合した本ツアーは、自然科学に興味を持つ旅行者や、家族連れ、学校の研修旅行としても注目されています。(写真:空に舞う雪虫、雪虫は雪が降る前兆と言われる)
1. 雪中に生きる昆虫たちの神秘
このツアーの目玉の一つが、冬の北海道でしか観察できない雪中昆虫の生態です。代表的な存在は「ユキムシ(トドノネオオワタムシ)」や「シリケンイモムシ」、また、極寒環境でも生きる「フユシャク(冬尺蛾)」の仲間たちです。これらの昆虫は、雪の表面や氷の下、倒木の下などで見られ、専門ガイドの案内のもと観察を行います。
ガイドは、昆虫学の知識を持つ専門家で、虫の見つけ方や特徴、生存戦略についてわかりやすく解説してくれます。参加者にはルーペや観察キットが配布され、まるで科学者になったような気分で観察を楽しむことができます。特に子どもたちには大人気のアクティビティで、自然の中で命の尊さを学ぶ貴重な機会です。


2. 氷下微生物の研究体験
もう一つの大きなテーマは、「氷の下に潜む微生物の世界」です。凍った湖や湿原の氷をドリルで掘り、氷下の水を採取して観察します。氷の下の水には、「クリプトフィト」や「微細藻類」、さらには雪氷中にしか見られない特殊な細菌類が生息しています。
研究体験では、簡易な顕微鏡を使って微生物の姿を観察したり、極低温環境でも活動する酵素の働きについて学んだりします。実験用のスライド作りや、サンプルの採取、データ記録の仕方なども体験でき、まるでフィールドラボの一員になったような臨場感があります。希望者には、簡易なDNA抽出実験などのオプションも用意されています。
3. 実施エリアとアクセス
このツアーは主に、北海道東部の「屈斜路湖」「阿寒湖」「網走湖」などで行われます。これらの地域は、厳寒期には湖が完全に結氷し、安定した氷上活動が可能となるため、ツアーに最適な環境です。
アクセスは、女満別空港や釧路空港からそれぞれの地域へのバスまたはレンタカー利用が便利です。冬季は道路状況により、移動時間が伸びる可能性もあるため、余裕のあるスケジュールが推奨されます。
4. 宿泊情報
参加者には、湖畔の温泉旅館や自然体験を重視したロッジ型宿泊施設が人気です。屈斜路湖では「屈斜路プリンスホテル」や「湖のコテージカムイミンタラ」、阿寒湖では「あかん遊久の里 鶴雅」などが快適な滞在を提供してくれます。宿泊先によっては、ツアーとのセットプランや食事付きのプランもあり、手ぶらで参加可能な魅力があります。
5. グルメと地域文化
ツアー中には、地元のグルメも楽しみの一つ。阿寒湖エリアでは「マリモ羊羹」や「阿寒モルトビール」、網走では「流氷カレー」や「オホーツク産ホタテのグリル」など、地元ならではの料理が揃っています。寒い冬に身体を温めてくれる「しばれ鍋」なども人気で、グルメ体験もツアーの楽しさをさらに引き立ててくれます。
6. 体験の流れと所要時間
ツアーは通常、朝の集合から夕方の解散まで1日がかりのプログラムが中心です。
- 午前:集合・レクチャー(昆虫の解説と観察方法の説明)
- 午前後半:雪中昆虫のフィールド観察と記録
- 昼食:地元レストランまたはキャンプ式ランチ
- 午後前半:氷上移動・氷下採取体験
- 午後後半:屋内にて微生物観察とまとめ講座
ツアー終了後には、参加者には観察記録ノートやオリジナル証明書が配布されます。これが子どもたちの自由研究や思い出づくりにも一役買っています。
7. 持ち物と注意点
服装は、スノーウェア、防寒ブーツ、手袋、ネックウォーマー、帽子など、万全の寒さ対策が必要です。主催者側でも一部レンタルが用意されていますが、事前の確認が必要です。また、フィールドでの活動には安全講習が行われ、事故防止のためのガイドが同伴します。
ツアーは1月下旬から2月中旬の厳冬期に限定開催されており、積雪量や氷の厚みによって日程が変動することもあります。天候の影響による中止や変更もあり得るため、参加前には詳細確認が必須です。

おわりに
「雪中昆虫観察と氷下微生物研究ツアー」は、冬の北海道の自然を深く知ることができる貴重な体験です。雪と氷の中で静かに息づく命に触れ、自ら観察・記録し、科学の面白さを体感できるこのツアーは、単なるレジャーを超えた知的な旅のかたちを提供してくれます。
子どもから大人まで楽しめる工夫が随所に施されており、家族旅行はもちろん、理科教育の一環や自然写真家の撮影ツアーとしても活用されています。北海道の大自然と科学の融合を、ぜひあなたの次の旅で体験してみてください。きっと、忘れられない冬の一日になることでしょう。