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“狩猟”を学ぶ・考える・味わう編~ハンターの足跡を追いながら考える「命をいただく」ということ~

    
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“狩猟”を学ぶ・考える・味わう編~ハンターの足跡を追いながら考える「命を...

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はじめに、狩猟は「危ない趣味」ではなく「土地の課題の読み解き」でもある

北海道を旅していると、道端の草地でエゾシカに出会うことがあります。かわいい、写真を撮りたい、そう思った次の瞬間に、別の現実が顔を出します。交通事故、農林業被害、森の植生の変化。そこに「捕る」という行為が絡むと、話は一気に重くなりがちです。けれど、旅のテーマを“狩猟を学ぶ”に置くと、重さはそのままに、視界が広がります。

ハンターの足跡を追うとは、銃や罠の技術を真似することではなく、動物の生態、地域の暮らし、管理の制度、そして食へつながる流れを、一本の線として理解する試みです。

環境省も、野生鳥獣の捕獲は原則禁止であり、狩猟や許可捕獲など法的枠組みの中で行われることを示しています。 

狩猟を、“動物の生態”、“地域の暮らし”、“管理の制度”との関わりで理解することが大切

1、旅行者が知っておくべき注意点、最重要は「見学の線引き」

まず大前提として、旅行者が独自に野生動物を追跡したり、捕獲に関わったりするのは避けましょう。狩猟は免許や登録、区域、期間などの厳格な条件があり、ルール外の行為は危険であるだけでなく違法にもなり得ます。 

安全面では次がポイントです。

• 見学や学習は、自治体や団体が提供する「体験プログラム」「見学型ツアー」を選ぶこと
• 森や猟区に近い場所では、案内者の指示に従い、勝手に先行しないこと
• 動物を見つけても距離を詰めない、車を降りて追わない、餌を与えないこと
• 服装は防寒、防水、目立つ色、そして携帯は予備バッテリーまで

また、食の場面では「どこで処理された肉か」を確認しましょう。北海道庁はエゾシカ肉の衛生処理に関するマニュアルを公開し、狩猟段階と食肉処理段階の複数工程で異常確認や衛生措置を結びつける重要性を示しています。旅先でジビエを味わうなら、こうした衛生管理の枠組みに乗った流通を選ぶのが基本です。 

2、「学ぶ」体験、足跡を追うとは“森の読解”をすること

狩猟の学びで面白いのは、銃や罠の話より先に「森の読み方」が来る点です。どこに餌があるか、どこが移動路か、風はどう流れるか。つまりハンターの足跡は、地形と生態のノートのようなものです。

学びを旅行者向けに“安全に翻訳”したプログラムとして、北海道の西興部村には「ハンティングスクール」があり、講義、ナイトアニマルウォッチング、出猟見学、解体見学、ジビエ料理などを組み合わせた内容が提示されています。ここで重要なのは、見学や解体学習のための個体を事前に用意するなど、学習の枠組みを整えている点です。 

また、道南では「はこだて鹿」のように、狩猟体験ツアーや解体見学、森林散策、料理教室、クラフトなどを通して狩猟と地域をつなぐプログラムを掲げる取り組みも見られます。 

ここでの学びのコツは、「獲るか獲らないか」ではなく、「命をいただくまでの流れを、どこまで透明化できるか」です。動物が森にいて、人が管理の判断をし、衛生処理を経て、食卓に乗る。その一連を、子どもにも説明できる言葉で持ち帰れると、旅は強い学びになります。

3、「味わう」体験、ジビエは“物語の最終章”として食べる

ジビエは、ただ珍しい肉ではありません。旅のテーマが“狩猟を学ぶ”なら、ジビエは最終章です。味わう前に「この肉はどの地域の、どの管理の文脈で、どのように衛生的に処理されたのか」を一言でも確認できると、食の重みが変わります。 

たとえば釧路・阿寒湖エリアでは、観光公式サイトがシカ肉料理を扱う店舗情報をまとめています。旅程を組む際の実用情報として便利です。 

食べ方の提案としては、最初は「丼」「ロースト」「カレー」など食べ慣れた形が良いでしょう。クセが不安な人ほど、良い店で、適切な下処理がされた一皿から入るのがおすすめです。阿寒湖のエゾシカ料理の例を紹介する記事もあり、旅のイメージ作りに役立ちます。 

“狩猟を学ぶ”なら、ジビエは最終章と位置付けることが重要

4、アクセス、宿泊、アクティビティ、旅を“学習設計”にする

旅の組み立ては、学びの順番が鍵です。おすすめは、

• 1日目、森を歩き、足跡や食痕など「痕跡」を観察し、夜に講義で整理する
• 2日目、見学や解体学習で「現実」を見て、夕方に料理で「食」に接続する

西興部村のように、講義、見学、料理、ディナーまで一気通貫で設計された例は、初学者にとって分かりやすいモデルです。 

宿泊は、温泉宿や静かなロッジが相性抜群です。理由は単純で、夜に振り返りの時間が取れるからです。今日見たもの、感じたこと、食べた味、それを言葉にして初めて「いただく」が自分事になります。

アクティビティとしては、ナイトアニマルウォッチング、森の散策、クラフト、料理教室など「危険な再現ではなく、理解につながる体験」を選びましょう。 

おわりに、足跡の先にあるのは“答え”ではなく“責任の感覚”

ハンターの足跡を追う旅は、爽快な冒険というより、静かな学習です。森の中で見つけるのは、動物そのものより、痕跡と関係性です。そして食卓で確かめるのは、味より先に「私たちは何を前提に、命をいただいているのか」という問いです。

旅が終わったあと、次にスーパーで肉を選ぶとき、たぶん手が一瞬だけ止まります。その“間”こそが、この旅の成果です。

便利さの裏側を想像できる力、そして命に対する距離感を整える力。それを、北海道の自然と地域の取り組みが、現実の形で教えてくれます。